子どもの体力はコロナ前に戻ったのか——回復したのは中学校男子だけ
子どもの体力合計点は、令和7年度調査で前年度から向上した。ただし回復したのは中学校男子だけで、小学校男女と中学校女子はコロナ前の水準に届いていない。スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の経年データから、回復の実態を確認する。
体力合計点は前年度から向上、しかし中学校男子以外はコロナ前未達
実技テスト8項目の合計(80点満点)である「体力合計点」の全国平均は、令和7年度調査で令和6年度と比較して、小学校は男子+0.5点・女子+0.1点、中学校は男子+0.4点・女子+0.3点向上した。
| 区分 | 令和元年度 (コロナ前) | 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 (概算) |
|---|---|---|---|---|
| 小学校男子 | 53.61点 | 52.6点 | 52.5点 | 約53.0点 |
| 小学校女子 | 55.59点 | 54.3点 | 53.9点 | 約54.0点 |
| 中学校男子 | 41.56点 | 41.2点 | 41.7点 | 約42.1点 |
| 中学校女子 | 50.03点 | 47.1点 | 47.2点 | 約47.5点 |
令和7年度の値は、令和6年度確定値に、スポーツ庁が公表した前年度比の増減幅を足した概算値である(一次資料に絶対値の記載がないため)。この概算で令和元年度と比較すると、中学校男子だけが+0.5点前後でコロナ前を上回り、小学校男子は-0.6点、小学校女子は-1.6点、中学校女子は-2.5点前後、いずれもコロナ前の水準に届いていない。スポーツ庁自身も「体力合計点は、小中学校男女ともに前年度から向上しているが、中学校男子を除いてコロナ前の水準に至っていない」と総括している。
運動時間は増えていない——長時間層は減り、ほぼ運動しない層は増加
体力の回復が鈍い背景として、運動時間そのものが増えていないことがある。令和7年度調査では、令和6年度と比較して「1週間の総運動時間が420分以上」の割合が、小学校で男子2.5ポイント・女子2.0ポイント減少、中学校で男子0.8ポイント・女子0.4ポイント減少した。一方「60分未満」の割合は、中学校女子を除き前年度より微増している。運動する子としない子の二極化が、この1年でも進んだ形だ。
運動時間・運動意識と体力合計点の関係(令和6年度データ)
運動時間別に見ると、体力合計点の差は大きい。
| 区分 | 0〜60分未満 | 60〜420分未満 | 420分以上 | 全国平均 |
|---|---|---|---|---|
| 小学校男子 | 43.2点 | 49.0点 | 56.9点 | 52.5点 |
| 小学校女子 | 48.3点 | 53.0点 | 58.8点 | 53.9点 |
| 中学校男子 | 32.2点 | 36.3点 | 44.0点 | 41.7点 |
| 中学校女子 | 39.0点 | 43.2点 | 52.6点 | 47.2点 |
運動が「好き」と答えた児童生徒も、体力合計点が高い傾向がはっきり出ている。令和6年度調査では、小学校男子で「好き」55.0点に対し「嫌い」41.1点、中学校男子で「好き」45.1点に対し「嫌い」30.0点と、10点以上の差がある。ただし令和7年度調査では「好き」「やや好き」の回答割合が、小学校女子だけ0.4ポイント減少し、小学校男子(+0.2pt)・中学校男子(+0.6pt)・中学校女子(+0.4pt)は増加した——単純な男女差ではなく、小学校女子だけが逆方向に動いている。
睡眠・スクリーンタイムは改善と悪化が同時に進む
令和7年度調査では、睡眠時間が「8時間以上」の割合が小中学校男女ともに増加傾向だった一方、平日の学習以外のスクリーンタイムが「3時間以上」の割合も小中学校男女ともに増加傾向にある。生活習慣の一部は改善しつつ、画面を見る時間は増え続けている。
この記事の限界
- 令和7年度の体力合計点の絶対値は、令和6年度確定値にスポーツ庁公表の前年度比増減を足した概算であり、スポーツ庁が算出した確定値ではない。確定値は基礎集計データ(Excel等)の精査が必要
- 本調査は小学校5年生・中学校2年生を対象とした悉皆調査であり、他の学年の状況を示すものではない
- 運動時間・運動意識は児童生徒の自己申告に基づく質問紙調査であり、実際の運動量の客観測定ではない
- 「体力合計点が高い/低い」と「運動が好き/嫌い」の相関は、因果の向き(運動が好きだから体力が高いのか、体力が高いから運動が好きになるのか)を区別できない
出典(2026年7月16日閲覧): スポーツ庁「令和7年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」(調査結果ページ/結果について(概要)PDF/調査結果の総括PDF)/ スポーツ庁「令和6年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果の概要」(PDF)/ スポーツ庁「令和5年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果(概要)について」(PDF)/ スポーツ庁「令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」(報告書第1章PDF)
児童生徒1人当たり1.1台——端末は600台減り、児童生徒は13万7783人減った
文科省調査から、公立学校の学習者用コンピュータ台数と児童生徒数、普通教室の通信環境、教員のICT活用指導力と研修の受講状況を確認する。「1人1台」が何を数えた比率なのかも整理する。
REPORTいじめ認知件数76万9022件、過去最多——認知した学校は83.9%、残り16.1%は0件だった
文科省調査から、いじめの認知件数と1,000人当たり件数の推移、学年別の分布、認知した学校の割合、重大事態の内訳を確認する。認知件数が何を数えた数字なのかも整理する。
REPORT高校卒業後の進路はどこへ向かっているか——大学・専門学校・就職の現在地
文部科学省の令和7年度学校基本統計から、高等学校等卒業者の大学・短大、専門学校、就職の割合と10年間の変化を確認する。